ハローワークで早期に再就職先が決まるともらえる手当。
雇用保険(失業給付または失業手当)の受給資格を満たしている人が、受給資格の決定を受けた後に早期に再就職先が決まった場合(または事業を開始した場合)にもらえる手当です。「ハローワーク就職祝い金」とも呼ばれ、所定の手続きをすると受け取れます。再就職までの期間が短いほど支給される額が多くなるのが特徴です。
失業から再就職までにもらえる失業手当の残り期間が多いほど額が高くなります。
再就職手当の受給額算出
基本手当日額×失業手当の残り期間×給付率
給付率は残り期間が3分の1以上なら60%、3分の2以上なら70%
- 再就職手当の支給条件
- 再就職手当
- 再就職手当はいつもらえる?受給できるタイミングは?
- 再就職手当の受給条件
- 再就職手当受給の流れ
- 再就職手当受給できないケース
- 再就職手当の計算方法
- 再就職手当の金額はいくらか
- 再就職手当のよくあるQ&A
- Q1 申請期限を過ぎてしまいました。入社から1カ月以上が経った状態で、再就職手当の支給手続きはできますか?
- Q2 再就職手当は銀行口座に振り込んでもらえるのでしょうか?
- Q3 再就職手当の申請中に退職する場合、再就職手当はもらえますか?
- Q4 会社から離職票が届きましたが、離職票に記載してある離職理由が実際の離職理由と違うのですが、どうしたらよいでしょうか。
- Q5 前の会社を、病気やけが、妊娠、出産、育児などの理由で退職しましたが、このような理由により退職したため、すぐに働くことができません。どうしたらよいでしょうか。
- Q6 会社を定年退職した後、しばらく仕事を探さずに休養したいのですが、どうしたらよいでしょうか。
- Q7 どのような活動が求職活動の実績に該当しますか。
再就職手当の支給条件
再就職手当を受けるには、下の条件を全て満たす必要があります。
- 受給手続き後、7日間の待機期間満了後の再就職
- 失業手当の残り期間が3分の1以上ある
- 再就職先が前職と関わりがない
- ハローワークまたは人材紹介会社経由で再就職(待機期間後の1ヶ月のみ)
- 再就職先で、1年以上の雇用が見込まれる
- 雇用保険に加入している
- 受給資格決定前に内定していない
- 支給決定日までに離職していない
注意したいのは⑤
期間限定の派遣社員やアルバイトの場合、早めに転職しても再就職手当を受けられない場合が多いようです。
早めに就職したくなりますが、非正規雇用や無理な転職では手当を受けられない場合があります。焦らずに、長続きする好条件の職場を探しましょう。
再就職手当
「雇用保険(失業給付または失業手当)の受給資格」とは、「失業状態である」「(原則として)退職日以前の2年間に雇用保険加入期間が通算12カ月以上ある」「ハローワークに求職の申し込みをしている」をすべて満たしていることが必要。
再就職手当のメリットとデメリット
- 【メリット】
- ・再就職先からの給与支給も受けられる(失業手当をもらっている場合よりも収入面で安定する)
- ・再就職先を退職しても、条件を満たしていれば再び失業保険がもらえる
- ・再就職手当を受け取ってすぐに退職しても返金の必要がない
- ・非課税
- 【デメリット】
- ・失業手当が打ち切りになる
- ・再就職する時期によってもらえない場合がある手当のため、求職活動を焦って失敗する原因になりかねない(自分に合わない企業に再就職するリスクが大きくなる)
失業手当を満額受給するより、早期に再就職するほうが受給金額は高い
実際に計算してみるとメリット・デメリットが分かりやすいです。離職期間中は失業手当がもらえますが、失業手当を満額もらうよりも、失業手当と再就職手当を合算したトータル金額のほうが大きくなる場合があります。下記の条件で計算をしてみましょう。
条件
- ・30歳以上35歳未満
- ・離職前の給料が月25万円
→離職前6カ月間の賃金総額が1,500,000円
(残業・通勤・住宅などの手当は含み、賞与・退職金・祝い金は除く) - ・自己都合退職
- ・失業手当の所定給付日数が90日間
(特例などでの延長はないものとする) - ・2022年7月末日時点での情報をもとに計算
支給される金額
- 失業手当満額(90日分)支給
495,900円 - 失業手当受給60日で再就職
429,780円失業手当330,600円
再就職手当99,180円 - 失業手当受給30日で再就職
396,720円失業手当165,300円
再就職手当231,420円
再就職手当はいつもらえる?受給できるタイミングは?
再就職をしてハローワークに報告をしてから、手当の申請をしておよそ1カ月半から2カ月後に再就職手当を受け取ります。
再就職手当の受給条件
以下の9項目すべてに当てはまっていれば再就職手当を受給資格があります。
失業手当の受給手続き後および待期期間満了後に就職する/事業を開始する
※待期期間中に仕事などをしたことにより失業の状態ではなかった日や失業の認定を受けていない日については、待期期間に含まれないので注意が必要
失業手当の受給資格決定日から7日間が待期期間です。待期期間中に就職すると再就職手当の受給条件外となります。
※給付制限がない方は、待期期間経過後であって失業手当の残日数が30日以上であれば、就職の経路を問わず受給の対象となります。
※自営業を開始した場合も、待期期間を満了したのち1カ月間が経過した後からが給付の対象になります。
就職日前日までの失業認定を受けたうえで、失業手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある
失業手当の給付期間が残り3分の1を切る前に就職しないと、要件に当てはまりません。給付日数が90日の場合、給付残日数が30日を切る前に再就職する必要があります。
離職した前の事業所への再就職ではない/離職した前の事業所と関わりが薄い事業所に就職
退職した会社に再就職した場合、要件を満たしません。また退職した会社と資本面・人事面・取引面で密接なつながりがある会社に就職した場合も受給対象から外れます。
求職申し込み・待期期間満了後1カ月以内に、ハローワークや職業紹介事業者の紹介で就職(※給付制限がある場合)
※受給資格に係る離職理由により、失業手当が支給されない給付制限がかかる期間がある場合
自己都合の退職で失業手当の給付制限があり、給付制限期間の最初の1カ月間で再就職する場合は、ハローワークもしくは職業紹介事業者からの紹介によって就職しないと支給対象になりません。
※「厚生労働大臣の許可を受けた職業紹介事業者による紹介」に該当する求人と、該当しない求人があります。
1年を超えての勤務が確実である(雇用条件は要確認)
短期契約で1年未満の勤務が確定している場合は、一般的には受給対象になりません。ただし契約社員や派遣社員など有期雇用で雇用期間が1年未満の場合であったとしても、契約更新が前提にあり1年以上の就業が見込める場合は、再就職手当の対象となる可能性があります。
雇用保険に加入している
再就職先で雇用保険に加入する必要があります。
過去3年以内に、再就職手当(事業開始に係るものも含む)や常用就職支度手当の支給を受けていない
就職日前の過去3年以内に含まれる就職で再就職手当(事業開始に係るものも含む)または常用就職支度手当の支給などを受けていると受給対象になりません。過去に受け取ったことがある場合はいつ受け取ったかを確認しましょう。
受給資格決定前から採用の内定をしていた事業主に雇用されたものではない
失業手当の給付の受給資格決定より前に内定をもらった場合、受給対象外となります。
再就職手当の支給決定の日までに離職していない
再就職が決まった後、再就職手当の支給決定までに離職する、もしくは離職予定がある場合でも給付対象外となります。
までに離職する、もしくは離職予定がある場合でも給付対象外となります。
再就職手当受給の流れ
再就職先の記入が必要な書類が複数あります。また期限もあるため、事前にしっかり確認してください。
1 採用証明書をハローワークへ提出する
採用証明書は失業手当受給の際に渡される「受給者のしおり」にあります。ハローワークのサイトからダウンロードすることもできます。再就職先に必要事項を記入してもらい、ハローワークに提出します。提出の際には、「採用証明書」とともに、「雇用保険受給資格者証」「失業認定申告書」「印鑑」が必要です。
2 再就職手当支給申請書を受け取る
就職または事業を開始することが決まったときは、就職または事業を開始する日の前日にハローワークなどに行って、失業認定申告書により就職の届け出を行い失業の認定を受けるのが原則となっています。採用証明書その他をハローワークに提出し、失業の認定を受けたうえで再就職手当の支給要件を満たしていると認定された場合、「再就職手当支給申請書」を受け取れます。
3 再就職手当支給申請書を再就職先に提出する
「再就職手当支給申請書」を再就職先に提出し、記入してもらいます。
4 再就職手当支給申請書と雇用保険受給資格者証を提出する
「再就職手当支給申請書」と「雇用保険受給資格者証」をハローワークに提出します。提出期限は再就職翌日から1カ月以内です。できる限り早く手続きを終わらせましょう。
もらえるとメリットが多い再就職手当ですが、先述した9つの受給条件すべてを満たしていないと、再就職手当は受給できません。
再就職手当受給できないケース
・再就職先で、雇用保険に加入しない
・失業手当の支給残日数が不足している
・再就職での雇用期間が1年未満で確定している
・関連会社への再就職
・3年以内に再就職手当を受給した
再就職手当がもらえなくても、「就業手当」がもらえる場合があります。就業手当とは、雇用保険の失業手当の受給資格者が、再就職手当の支給対象とならない常用雇用等以外の形態で就業した場合に受給できる手当です。非正規雇用として早期に再就職した人をサポートするための制度ともいえるでしょう。失業手当の支給残日数が所定給付日数の1/3以上かつ45日以上あるなど、条件を満たせば受給できます。再就職手当を受給できない人は、就業手当の申請も検討してみましょう。
再就職手当の計算方法
再就職手当の金額は、「失業手当日額」と「失業手当の残り給付日数」によって決定します。
■再就職手当の額
所定給付日数 | 支給残日数 | 再就職手当の額 | |
---|---|---|---|
支給率60%の場合 | 支給率70%の場合 | ||
90日 | 30日以上 | 60日以上 | 失業手当日額※1 × 所定給付日数の支給残日数 × 60%または70% (1円未満の端数は切り捨て) |
120日 | 40日以上 | 80日以上 | |
150日 | 50日以上 | 100日以上 | |
180日 | 60日以上 | 120日以上 | |
210日 | 70日以上 | 140日以上 | |
240日 | 80日以上 | 160日以上 | |
270日 | 90日以上 | 180日以上 | |
300日 | 100日以上 | 200日以上 | |
330日 | 110日以上 | 220日以上 | |
360日 | 120日以上 | 240日以上 |
※1
再就職手当に係る失業手当日額には上限額があります(2022年7月31日までの額)。離職時の年齢が60歳未満の人:6,120円
離職時の年齢が60歳以上65歳未満の人:4,950円
(毎年、8月1日に「毎月勤労統計」の平均給与額により改定されます)
再就職手当の計算式は下記のとおりです。
60%か70%かは、所定給付日数(失業手当を受給できる日数)がどれだけ残っているかによります。所定給付日数の3分の2以上残っていると70%、所定給付日数の3分の1以上残っていると60%です。
- 所定給付日数の3分の2以上残して再就職した場合:「失業手当」×「残り給付日数」×「70%」
- 所定給付日数の3分の1以上残して再就職した場合:「失業手当」×「残り給付日数」×「60%」
- 所定給付日数の3分の1以上残っていない場合:受給資格外
再就職手当の金額はいくらか
離職時の年齢が60歳未満か60歳以上かで失業手当の上限が違うため、それぞれの場合について紹介します。
再就職手当の金額(60歳未満の場合)
条件
- ・29歳
- ・離職前の平均月収30万円
- ・自己都合退職
- ・失業手当の所定給付日数が90日間
計算
- 賃金日額=300,000×6÷180=10,000
- 離職時の年齢が29歳以下で賃金日額が4,640円以上・11,740円以下の場合、給付率が50〜80%で変動。
失業手当日額を「賃金日額×0.8-0.3{(賃金日額-4,970)÷(12,240-4,970)}×賃金日額」に当てはめて計算。 - 失業手当日額=10,000×0.8-0.3{(10,000-4,970)÷(12,240-4,970)}×10,000=5,924.34663≒5,924円
- ■失業手当受給30日で再就職
- 残り給付日数:60日
→所定給付日数の3分の2以上残して再就職した場合
→支給率:70% - 失業手当(5,924円)×残り給付日数(60日)×支給率(70%)=248,808円
- ■失業手当受給60日で再就職
- 残り給付日数:30日
→所定給付日数の3分の1以上残して再就職した場合
→支給率:60% - 失業手当(5,924円)×残り給付日数(30日)×支給率(60%)=106,632円
支給される金額
- 失業手当受給30日で再就職
支給率70%→248,808円 - 失業手当受給60日で再就職
支給率60%→106,632円
再就職手当の金額(60歳以上65歳未満の場合)
条件
- ・60歳
- ・離職前の平均月収45万円
- ・自己都合退職
- ・失業手当の所定給付日数が90日間
計算
- 賃金日額=450,000×6÷180=15,000
- 離職時の年齢が60歳以上65歳未満で賃金日額が11,140円以上・15,970円以下の場合、給付率が45%
- 15,000×45%=6,750円
- 再就職手当の算定における上限額は、以下のとおり(2022年7月末日時点)。59歳以下は6,120円、60歳以上64歳までは4,950円
- 失業手当日額=4,950円
- ■失業手当受給30日で再就職
- 残り給付日数:60日
→所定給付日数の3分の2以上残して再就職した場合
→支給率:70% - 失業手当(4,950円)×残り給付日数(60日)×支給率(70%)=207,900円
- ■失業手当受給60日で再就職
- 残り給付日数:30日
→所定給付日数の3分の1以上残して再就職した場合
→支給率:60% - 失業手当(4,950円)×残り給付日数(30日)×支給率(60%)=89,100円
支給される金額
- 失業手当受給30日で再就職
支給率70%→207,900円 - 失業手当受給60日で再就職
支給率60%→89,100円
再就職手当のよくあるQ&A
Q1 申請期限を過ぎてしまいました。入社から1カ月以上が経った状態で、再就職手当の支給手続きはできますか?
期限内に手続きするのが原則ですが、期限が過ぎても就職日から2年間以内であれば申請は可能です。
ただし期限内に支給申請が行われない場合は、通常より支給が遅くなる可能性があります。可能なかぎり期限内に支給申請しましょう。また申請期限を過ぎてしまったと気づいた時点で速やかに申請するのも大事です。
Q2 再就職手当は銀行口座に振り込んでもらえるのでしょうか?
支給方法はご自身が指定した本人名義の銀行の口座振り込みです。
振り込まれるまでには申請してから1〜2カ月程度の時間がかかります。ハローワークが混雑していなかったり、手続きがスムーズに進んだりすれば早く振り込まれる場合もありますが、時間がかかるものだと覚悟して経済的な余裕を持っておいたほうがいいでしょう。
Q3 再就職手当の申請中に退職する場合、再就職手当はもらえますか?
再就職手当の支給条件をすべて満たして退職する場合は、もらえる可能性があります。
ただしあくまで“可能性”なので、実際にもらえるかはハローワークで必ず確認するようにしましょう。失業手当の受給期間は基本的に、前回退職した日の翌日から1年間です。期間中で支給残日数がまだあれば、再就職の申し込みをハローワークで速やかに行い、再就職手当の支給再申請が可能です。
Q4 会社から離職票が届きましたが、離職票に記載してある離職理由が実際の離職理由と違うのですが、どうしたらよいでしょうか。
実際の退職理由は、解雇であるにもかかわらず、離職票には、自己都合退職と記載されている場合など、実際の退職理由と離職票の記載が異なる場合は、雇用保険(基本手当)の受給の手続時に、住居所を管轄するハローワークの担当者へその旨お伝えください。なお、手続時に、離職理由を証明する書類等があれば、お持ちください。
ハローワークにおいては、本人の主張、証拠書類と事業主の主張等を確認の上、離職理由を決定することとなります
Q5 前の会社を、病気やけが、妊娠、出産、育児などの理由で退職しましたが、このような理由により退職したため、すぐに働くことができません。どうしたらよいでしょうか。
雇用保険(基本手当)を受給するためには、就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力(健康状態、環境など)があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態にあることが必要です。
このため、病気やけが、妊娠、出産、育児などですぐに職業に就くことができない方は、雇用保険(基本手当)を受けることができません。
雇用保険(基本手当)を受けることができる期間は、離職日の翌日から1年間に限られており、これを受給期間といいますが、離職日の翌日から1年以内に30日以上継続して職業に就くことができない場合は、受給期間の延長申請を行うことで、本来の受給期間1年に働けない日数を加えることができ、職業に就くことができる状態になった後に、受給手続ができます。
ただし、受給期間(1年)に加えることができる期間は最大3年間です。
Q6 会社を定年退職した後、しばらく仕事を探さずに休養したいのですが、どうしたらよいでしょうか。
雇用保険(基本手当)を受給するためには、就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力(健康状態、環境など)があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態にあることが必要です。
このため、すぐに仕事を探す予定でない方は、雇用保険(基本手当)を受けることができませんので、離職日の翌日から2か月以内に受給期間の延長申請を行っていただくことで、本来の受給期間1年間に求職申込みをしない期間を加えることができ、仕事を探せるようになった後に、雇用保険(基本手当)の受給手続ができます。
また、受給期間に加えることができる期間は、最大1年間です。
Q7 どのような活動が求職活動の実績に該当しますか。
求職活動の実績に該当するものとして、次のようなものがあります。
・求人への応募、ハローワーク等が行う職業相談・職業紹介等、許可・届出がある民間機関が行う職業相談・職業紹介等、公的機関等が行う各種講習・セミナー、個別相談ができる企業説明会等の受講など。